いまさら聞けない労務の話②
労働者名簿は労務管理の基本
労働者名簿は、労働者の氏名や採用した日など、企業が雇用を行う上で必要な労働者の情報を記した書類のことです。
労働者名簿の設置と対象
労働者名簿の設置義務
労働者名簿は、会社の規模などに関係なく、従業員を雇入れている場合は、労働基準法第107条によって、作成、整備が義務付けられています。
これには、大企業や中小企業、法人や個人などに関わらず、作成・整備しなければなりません。
また、労働者名簿は「事業場ごとに作成・整備する」ということも定められています。もし複数の事業所で労働者の雇入れをしている場合はそれぞれの事業所で労働者名簿を作りましょう。
労働者名簿の対象
労働者名簿を作成する必要がある従業員は、原則として雇っている全員になります。
正社員・パート等の雇用形態に関係なく、雇用している従業員全員分の情報管理が必要です。
ただし、以下のような場合は管理の対象になるか難しいため注意しましょう。
労働者名簿に記載しなければいけない項目
労働者名簿には、以下の8つの項目を記載しなければいけません。すでに労働者名簿がある企業は今一度項目がしっかりとあるか確認しましょう。
- 労働者氏名
- 生年月日
- 履歴
- 性別
- 住所
- 従事する業務の種類
- 雇用年月日
- 退職や死亡年月日とその理由や原因
様式に関しては以上の8項目があれば問題はありません。厚生労働省のホームページでも、「主要様式ダウンロードコーナー」から以下のような労働者名簿のテンプレート(様式第19号)がダウンロードできますので、それを利用してもいいと思います。
保存期間、保管、更新等の注意点
労働者名簿に関してじは、提出するような申請等はありません。ただし、労働基準監督署の調査が入った時は提出するように求められることもあるため、適切に管理しておくことが重要です。
事業所ごとに作成が義務付けられるため、本社以外に支店などがある場合は、支店ごとに作成・保管を行うか、本社で一括して作成する場合は、支店別の管理を行い支店に配るようにするといいと思います。
その他、労働者名簿を管理する際は、以下の点にも注意しましょう。
保存期間
労働者名簿は、労働基準法第109条により3年間の保存が義務付けられています。また、保存期間に関しては、従業員の在籍中から、「従業員の退職や解雇、又は死亡日から起算して3年」となっています。
変更・更新
労働基準法施行規則第53条により、労働者名簿の更新は「遅延なく」と定められています。もし内容に変更が生じた場合は、速やかに名簿を修正する必要があります。
データで管理されている場合はそのまま修正しますが、紙での保存している場合は変更になった記載事項に二重線を引き、訂正印を押して新たな情報を記載しましょう。
保管方法
労働基準法では労働者名簿の保管方法についての定めが明確でないため、現在も紙で保管するという企業は少なくありません。しかし、業務のペーパーレス化が進む中、今では労働者名簿をパソコンで作成し電子データで保管することも行政通達で認められています。
紙で管理していると、更新回数が増えるたびに何度も訂正印を押すような事態になり、見た目も悪く事実確認が煩わしくなります。また、労働者名簿は「遅延なく更新すること」が鉄則なので、業務上の利便性から見ても、電子データで保管するほうが合理的と言えるでしょう。
労働者名簿テンプレート
以下、当事務所で活用している労働者名簿になります。健康保険番号や雇用保険番号等も記載できるようになっているため、保険関係の情報も管理できます。
ダウンロードはExcelファイルになります。
次回は賃金台帳に関してご説明します!
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