いまさら聞けない労務の話④
出勤簿
出勤簿は、労働基準法にのっとり、法定三帳簿のひとつとなっています。通達の第4項「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置」に従って、事業主は、労働者の始業・終業時刻の確認と記録を実施する必要があり、それをまとめたものが出勤簿となっています。
タイムカードと出勤簿
出退勤を記録するためにタイムカードを使っている企業も多いと思います。しかし、タイムカードに打刻した時間が、必ずしも正確な出退勤時間とは限りません。しかし、紙媒体での出勤簿に関しても、以下のような義務があります。
労働時間の客観的把握義務
2019年4月より、自己申告型での労働時間の把握が禁止され、労働時間は客観的に把握すべきであるとされ、紙の出勤簿やマクロを組んで一括入力するような勤怠管理の方法は適切な出退勤時刻に値しないものとなりました。
もし今後もエクセルや紙の状態での出勤簿を使用する場合は、①従業員と管理者への十分な説明、②実態調査、③自己申告との乖離がある場合の報告・確認、④労働時間の適切な申告の阻害の有無の確認の4つを満たした場合のみ使用できます。
対象従業員
出勤簿を作る従業員は基本的に従業員すべてです。正社員屋パート等の雇用形態に関係なく、出勤簿に勤務状況を記載します。
ただし、労働基準法に規定されている「管理監督者」に関しては、経営者と同じ立場にあり従業員を管理する人を指し、自己判断にて出退勤のできる自由裁量を持ち合わせるとされ、出勤簿に記載義務はありません。
出勤簿に記載すべき事項
出勤簿に記載する事項は以下の通りです。
- 各労働者の出勤日と労働日数(出社・退社時刻を含む)
- 日別の労働時間数
- 時間外労働を行った日付と時刻・時間数
- 休日労働を行った日付と時刻・時間数
- 22時から翌5時までの深夜労働を行った日付と時刻・時間数
なお、時間外労働と休日労働の基準は以下の通りです。
- 時間外労働とは 「時間外労働」とは、原則1日で8時間もしくは1週間で40時間を超える部分です。
- 休日労働とは 1週間に1日、もしくは4週間に4日以上が休日として定められていますが、この範囲を超えた労働が「休日労働」となります。
出勤簿の書式例
出勤簿の書式自体は、形式は問われていません。したがって、労務管理や給与計算の担当者が間違いなく作業できるよう、使用しやすいものを選ぶことをおすすめします。記載すべき事項が整っていれば問題ありません。
出勤簿の保存期間と法律違反時の罰金
出勤簿の保存期間
出勤簿は、賃金台帳等と同じく労働基準法第109条の「賃金その他労働関係に関する重要な書類」に該当するため、保存期間は3年となっています。これは、出勤簿が最後に記入されてから3年という意味なので、退職した社員の最後の出勤の日から3年間は出勤簿等の書類を残す義務がありますので注意しましょう。
また、労働基準法第115条の規定では退職金の請求権の時効が5年となっており、この期間に労働者より請求がある場合もあるため、できれば5年保管しておけばなお安心です。
出勤簿の保存に関する罰金制度
3年以内に廃棄や紛失してしまった場合には、事業主に30万円以下の罰金が科される可能性があります。場合によっては法律違反として公表される可能性もあります。
次回は労働者名簿について詳しく解説します!
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